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同一素材から作るグルーヴの変化

まず最初に前回のおさらいと復習を兼ねて

Aftereffectsの基本性能だけで素材を作ってきましたが

Illustratorを使うとさらに簡単に素材の精度を上げていけます。

まずIllustratorを開いて、適当な箱の素材をたくさん作りましょう。

こんな感じのものを適当にたくさん作ってセーブしたら、AEに読み込んでいきます。

繋げ合わせたり組み合わせて、土台になるものをたくさん作ります。

先日と同じように横長のコンポジションを作って適当に配置します。

極座標を使って丸めます。

このようなやり方は前回までと同じです。

同様に回転する素材のバリエーションを作っていきます

これらを長めにゆっくり回転する素材を作ります。

今回は大体30秒で1回転するような感じで作りました。

圧縮はAnimationでアルファチャンネル付きで出力します。

これらを読み込んで

一つのコンポジションにまとめておいたものがこちら

Illustratorでアウトラインを作っておくとマンガっぽい仕上がりになって

個人的に気に入っていますw

レイヤーごとの境目を強調するために

エフェクト>遠近>ドロップシャドウを全レイヤーに適用します。

それぞれの動画のループ回数設定を多めに設定

速度やサイズにバリエーションをつけます。

レンダリングしたものがこちらです。

今回若干長めに、30秒ほど書き出しました

普通の動画制作(PVやゲームの基本画面などの背景)ではこの辺りで完成とするのですが

このVJ講座でははもうちょっと先まで見越して素材を作っていきます。

簡単に魔法少女に例えると、

「変身前はクラスでも目立たない存在でした」

この動画に「性格」や「意味」のキャラ設定をつけて

「変身」させて行くわけです。

 

ところで、上の動画素材を見ていて何か気がついたでしょうか?

同じ円周上の動きの中で目についたものは?

おそらく中央付近で回転速度の高いものと

外周付近で拡大縮小している素材だと思います。

長く見続けていると、20秒くらいで飽き始めてきたのが自覚できるのではないでしょうか?

どのVJ素材でも「興味を引き続けられる時間」があり、これはそれほど長くありません。

人間の目は同じ動きをしているものに関しては

「はいはい同じ速度で回っているのね」とパターンを認知して

同様の動きが続くとその部分に関しては注意を払わなくなります。

ですので「複雑さ」や「描き込みの多さ」などよりも

突飛で奇異な動きなどに目を奪われるのです。

この映像の「動作」が持っている個性的な性質のことを、「エッジ」とここでは呼びます。

 

どのように映像に「エッジ」をつけていくか?

ということには様々なアプローチがあります。

動きで言えば、「回転」・「移動」・「遠近感」・「拡大縮小」

素材の質感で言えば「変形」・「透明度」・「テクスチャー」・「輝度」・「色相」

などの変化です。

映像を構成するパーツや映像内で展開するストーリーよりも、

全体の動作から受ける印象の方がこの場合重要です。

これらの差異の積み上げによって映像のエッジを増やしたり、減らしたりすることで

音楽のグルーヴを表現することができます。

これがVJのミックスプレイの基本になります。

VJは一つの動きに縛り付けることを「ハメる」と言います。

反対に縛り付けていた動きを解放することを「トバす」と言います。

お客さんの目線からだと

「映像にハマった」「映像でトンだ」という事で

VJはこれを、意図的に組み上げてコントロールしていきます。

 

映像の「エッジ」を使って、観客の目を「ハメ」てブレイクで「トバす」

"Visual Jockey"の"Jockey"(乗りこなす)の部分のことで

これがVJプレイの基本です

 

ここで大事なのは、必ずしも「エッジが多ければ良いわけではない」ということ

エッジが多すぎると、人間の脳は全体を「ノイズ」と感じて、

詳細まで認識しようとしなくなります。

森の木々一つ一つや、海面の波を全部見ないのと同じことです。

同じエッジを持つ素材ばかりをずーっと使っているVJや

逆にバラバラの素材ばかりを適当に延々繋いで「エッジ」の立っていないVJは

編集や構成という作業を何も行なっていないので、

もともと意味があるように構成していないのならば何も山場はできません。

VJの本質はエッジを繋いでハメてから「どうやって映像でトバすか?」です。

物語に「絵コンテ」のような下書きのような段階があって

起承転結が大事なのはVJもまったく同じと言えます。

「転」を強調するための「起承」や「結」の部分を作るのは

VJの頭の中にある展開で映像を構成する技術です。

 

さて、閑話休題。

これらの同じ素材を使って

具体的にどう「エッジ」を立てて視線を「ハメ」ていくか?

一つの方法は、「エッジ」の要素一つ一つを増やしていく事です。例を挙げて説明します。

こちらが変化なしの素材。

回転の速度をランダムに変化させたもの。

ほぼ同様に見えますが、唐突な速度変化が起きるたびに

感覚がリセットされます。

この2つの差異は微妙ですが

「変化なし」→「変化あり」と切り替える事で、微妙な変化をもたらせることができます。

音楽の導入から音の素材やボーカルが1つ2つ乗ってきた頃に

素材に微妙な変化を加えてエフェクトを加えてテンポを合わせていきます。

この流れをベースに別の素材を重ねていっても、

人間の目は映像の裏にある秩序を読み取ろうとしますから大丈夫。

ちゃんと伝わります。

慣れてきたら右手と左手で別々の展開を作りながらミックスすることもできますが

ここでは単純化した一つの流れで説明を続けていきます。

やがてAメロディーからBメロディーが始まるくらいの多少大きな変化が来たら

それまで縛っていた「同軸上」という縛りを解放します。

ここで視覚のエッジを一つ加えるわけです。

音の展開にもよりますが大概の音楽の展開では

この後再度元いた場所に戻ることが多いと思います。

また元の展開に戻る、ということで構成にもエッジをつけます。

同一素材に帰って来て、色相の変化エフェクトや、ミックスで場をつなぎます。

お客さんの目には、

「同軸上の回転」というエッジが土台になっている

という展開が刷り込まれます。

そして構成により展開が加わるという事も理解されます。

物事を判断する基準点をこちらから打ちだして「ハメ」ていくわけです。

構成によるハメです。

音楽の展開は

導入→ Aメロディー → A'メロディー → Bメロディー →A’’メロディー

というような王道の流れを想定していますが

予想されるのはここからブレイクを挟んでCメロディーへの展開です。

大きく変化させたいので

今まで全部に共通していたXY平面の「ハメ」を解放して

ブレイクのタイミングで「トバし」ます

再びグルーヴが平坦になって音楽も次の展開に変化します

「何かの要素をキープするか?」「遠近感のある素材を続けるか?」

などの選択を重ねてグルーヴを練っていきます。

曲や雰囲気がガラッと変わった際は、例えば円形の素材回転という縛りをやめて

縦方向の動きの映像を展開します。

雰囲気を維持したまま、別の世界観に移行させるわけです。

”サイバーっぽさ”でフロアが展開しているのであれば

同様に”サイバーっぽい”素材であればグルーヴはキープし続けられます。

そしてブレイクで再度遠近感の素材を投入

これで「ブレイクは遠近感が来る」という「ハメ」が作れます。

これが展開によるハメです。

お客さんの頭の中には

*この映像には展開があること

*”サイバー空間っぽい”という映像素材の選択が続いているということ

*ブレイクから放射状に広がるお約束があること

*曲ごとにその「お約束」が裏切られること

などが書き込まれます。

なので音の展開に合わせて、次の「トバし」に無意識に集中するようになります。

これはある種の信頼関係なので、VJが交代するまで同じ方法が維持できますし

スクリーンに帰ってきた時に同様なプレイから続ける事ができます。

こうして一晩を通じて大きな映像のグルーヴの山を作っていきます

素材によるものなのか、展開によるものなのか、色調・雰囲気によるものなのか?

これを素材のチョイスやミックスプレイを通じて

パーティーやフロア全体の雰囲気や客層

時間帯やお客さんのスクリーンへの集中度などを見ながら

映像の大きな流れを組み上げていきます。

これがVJが作るグルーヴになります。

 

”ド派手なヒーロー大集合!総集編!一挙公開!”

これがVJが最初に一番陥りやすい罠で

特に1話からラストまでそれを延々やって

「こんなに凄いんだからもっと盛り上がれよ!」って言ってるみたいな事例多いです。

本来の意図とは逆に、見飽きさせ、疲れさせる事が多いのではないでしょうか?

一番基準になる土台を決めて、そこからの盛り上がる展開をDJとシンクロして作っていけば

フロア+DJ+VJの相互作用を作り出す事ができます。

「自分たちが、気がついたらこんなに盛り上がっていた」状態にする為

様々な技術でハシゴをかけていつのまにか登らせてる

というVJの方がフロアを支配しているプレイヤーと言えます。

ここ!という所でカッコよく見える為に前後をちゃんと考えて

素材のエッジをバラけさせて作っていきましょう。

「この素材は完成したらどの展開に収まるのか?」

これを考えていけば、足りなくなっている素材にも気がつくことができます。

もしも映像を見て何か物足りないと感じたら、それもその素材の長所の一つです。

要素を少しづつ加えて

視覚的エッジが徐々に変化するように、そこからグラデーションを作っておけば

いつか役に立ってくれたりします。

 

ということで、1つの素材作りから

実際のプレイを想定するところまで

若干長めにご説明しました。

Visual Jockyは

素材とプレイの相互関係で映像を演奏するパフォーマンスアートです。

素材のチョイスとプレイ技術の向上でいくらでも成長することができます。

それは音楽やダンスや職人の世界とまったく同じだと僕は考えます。

おそらく生涯成長し続けられる奥深さがあります。

今後その魅力に通じる為に

素材作りとプレイの両面から進めていきたいと思っています。

よろしくお願いいたします。

Have a Good Party !

VJ Spike-Bloom

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